到着の合図を知らせるヴァイオリンが主旋律のBGMが優雅に流れ、機内で溜まっていた窮屈感が解放されるかのように、飛行機の出入り口が開く。
外へ出ると、ジワっと肌にまとわりついてくる蒸し暑さと、なんともいえない独特なアジアの臭いが出迎えてくれる。
ヤンゴン。
アジア最後のフロンティアとも呼ばれ、どうやら現在急速な発展を遂げている途中の街らしい。
イミグレーションを抜け、タクシーの客引きに声を掛けられるのを何人か避けながら、人柄の良さそうな、話しやすそうな雰囲気を持った男の子を見つけ、ダウンタウンまで行ってもらうことにした。
ミャンマーでは、男性でもスカートを穿くらしい。
赤とグリーンのチェック柄のスカートがとても自然に馴染んでいる。
助手席に座り、彼の家族の話や、ミャンマーの観光についての話を聞いたりしながら、安宿のある通りへ向かう。
気がついたのは、ミャンマーは、右ハンドル右車線であるということ。
彼が乗っている車がたまたま右ハンドルなだけかと思ったが、周りの車を見ていると、みんな右ハンドルで運転をしている。
彼らにとっては当たり前のことだが、日本人である自分には不思議に思えて仕方なかった。
路上駐車だらけの雑然とした通りに着き、タクシーを降りる。
中心街の少し外れにある、「Four Rivers Hostel」が、今日の宿だ。
チェックインを済ませ、街を少し徘徊する事にした。
雰囲気に慣れるために、今日は宿の周辺をうろうろすることに。
宿に着いたのが夕方ですぐに暗くなり、空腹を満たしたくもなったので、地元の食堂のようなところに入ってみる。
15,6歳くらいの女の子の従業員が接客してくれたのだが、簡単な英単語もあまり通じず、注文ができないので、1番ポピュラーなものを食べたいという気持ちを伝える。
そして、なんとか持ってきてくれたのが短いうどんのような麺料理。漬け物とスープ付きだった。
食べてみると麺が柔らかく、コシというものはまるでないのだが、スープは鶏ベースで出来ており、味の土台はしっかりしていて薄味で美味しい。
あとで調べてみると、どうやら「ナンジートゥッ」という米粉を使った麺料理のようだ。
これで800チャット(約80円)はかなり安くて助かる。
そして、スーパーでビールを買い、宿に戻り、共有スペースでフランスや、オーストリアから来た宿泊客と少し話しながらビールを開けていく。
酒が足りず、外へ。
最初にビールを買った店が少し遠かったので、もっと近くにないか探してみることにした。
少し徘徊していると、大通りの交差点付近に、地元の喫茶店のようなところを見つけたので、中に入ってみる。
5,6歳くらいの少年でもこの街では立派に働いているのだ。
「Beer」という単語だけは通じたようで、大きい瓶で持ってきてくれた。
目の前に座っているおじさんとアイコンタクトを交わし、話しかけてみるが、まったく言葉が通じないので、笑顔を酒だけのコミュニケーションをしばし楽しんだ。
ミャンマービールが美味い、ウイスキーが美味い、ミャンマー。
ミャンマービールはドイツで行われる国際的なビールコンテストで何度も受賞している実力派だそうだ。
いつか日本でも流通してくれることを願おう。
軽く歩いた1日目は終わる。
こじんまりとした空間が秘密基地のように思え、童心が少しフラッシュバックするのが、ドミトリーの好きなところだ。