音楽が中心となっている観光地はごく少ない。
メンフィスはその一つでもあり、ロックミュージックのルーツを語る上で欠かせない、非常に重要な場所だ。
サンスタジオ。
ここは、エルビス・プレスリーや、ジョニーキャッシュ、ハウリンウルフ、B.B.KINGなどのロックやブルースの歴史を語る上で欠かせないアーティスト達が、このスタジオでレコーディングを行ったという、伝説のスタジオである。
近年では、このスタジオに憧れをもつポール・マッカートニー、U2、べック、日本からも多くのミュージシャンがレコーディングに訪れたことがあるようだ。
エントランスを入るとバーカウンターと、グッズが買えるスペースになっている。
スタジオ内部の見学は30分間隔でガイドが案内してくれるツアーのような形になっている。
説明を聞きながら、当時レコーディング等で使用されていた機材や、一つの大きな音楽の歴史を創ったアーティスト達の使用した楽器などを見てまわることができる。
心がノスタルジックに染まっていく。レコードの針の音と共に、セピア色のメロディーとリズムが聞こえてくるような、そんな光景。
見学を終えた後、再びダウンタウンのほうへ戻る。
陽が落ちる前のbeale.stもまた違った雰囲気を見せてくれる。
ソウルフルでパワフルな声を聞かせてくれるお姉さん。
警官が自分のパトカーの中にカギを付けたままロックしてしまい、一般人に助けてもらっている。
そしてまた陽は沈み、暗くなるに連れてメンフィスらしい顔を見せてくれるようになる。
街を歩いていると、夜になるに連れ、人々のテンションが少しずつ上がっていく。
この街を歩いている人はみんな音楽が好きで、ノリも愛想もいい。素敵な顔を見せてくれる。
若い頃の夢の断片を目の当たりにしたような、軽いデジャブのような感覚。
この街に着いてから、そんな想いを巡らせる光景が多くなってきた。
ハープの音がメンフィスのネオン街に哀愁の音を響かせる。
今夜もブルースは鳴り止まない。