空から見下ろす田園風景に心を踊らされていたのは、都会の景色とのコントラストのせいかもしれないが、今まで旅をしたことのある田舎の風景とはまた違った雰囲気に、確実に瞳を奪われていた。
サンフランシスコを出てヒューストンでトランジット、定員が30人ほどの小さなローカル線のジェット機に乗り、メンフィス国際空港へ到着したのは、太陽の光がまだ心地よく感じる午前9時。
ターンテーブルから荷物が出て来るのが遅い時は少し不安になるが、最後のほうに出てきた自分の荷物を引き取り、次への移動手段を探す事にする。
テネシー州最大の都市メンフィス。とはいえアメリカの内陸のこの都市はいうほど都会ではなさそうだ。
空港の玄関をでたロータリーは閑散としている。
行き交う人々もほとんどいない。都会の暮らしに慣れてしまった人間にとっては、田舎過ぎて不安を覚えるくらい人気(ひとけ)が少ない空港だ。
ロータリーを歩いていると、TAXI乗り場のようなところがある。
黒人男性が3人ほど世間話をしている。
声をかけてみると、タクシーの運転手だったので、メンフィス・ダウンタウンのほうへ行きたいと伝え、タクシーに乗り込む。
一見少し怖そうな体の大きな黒人ドライバーと世間話を交わしながら少しづつ打ち解けていき、フリーウェイを抜け、ダウンタウンへ到着。予約していたホテルに到着する。
ドライバーの男性が、「空港へ向かうときはまたここに電話してくれたらホテルまで迎えにくるよ。」と、手書きで電話番号と名前を書いた名刺サイズのカードをもらい、タクシーを降り、ホテルのカウンターへ向かう。
チェックインにはまだ早い時間帯のようで、大きい荷物だけを預け、少し街を歩いて見る事に。
それなりにホテルやビル等の建物は多いが、どこか閑散としている。
ビル一棟がまるごと廃墟になっている建物や、イスがテーブルに上がったままだが、営業時間外というわけではなさそうなヒビが入り曇りがかった窓ガラスのレストラン。
エントランスに拳銃持ち込み禁止のマークも少し目に入る。
MAPを片手に3rd streetを歩き、2回ほど角を曲がり、徘徊しているとBeale Streetという、夜メンフィスで一番華やかになるストリートに到着。
ここはストリート全体がほぼLIVE&BARで出来上がっている。午前中はまだどこもオープンしておらず、閑散としている。
ここは夜にならないと遊べないと思い、オープンしているカフェを見つけ、テラスでアイスコーヒーを飲みながら時間を潰し、チェックイン時間を待つことにした。
ホテルのチェックイン時間を迎え、一度部屋へ入る。
そして、また街を歩く。今日は、午前中に見つけた「ROCKN’ SOUL MUSIUM」へ入ることにした。
ブルース・ロックンロール誕生のヒストリーを映像と音楽と、当時使用されていた生活用品や楽器、レコード、衣装などの展示を見学することができる。
少しの間、古き良きアメリカの音楽に浸りながら、50年代、60年代へとタイムスリップしていく。
日が暮れる少し前になると、ビールストリートのバーからさまざまな音が聞こえてくるようになる。
ブルースの巨匠、B.B.KINGの経営する「B.B.KING BLUES BAR」から心地良いロックンロールサウンドが聞こえてきた。
エルビスプレスリーの「監獄ロック」の演奏が聞こえてきた。
テンションも高揚、自然と足は店内へと進む。
夜になるともう少し本格的なブルースマンが登場。
どんどん場内のテンションは高くなっていく。
初日から本場の黒人のギタープレイを見られるなんて感激してしまう。
日本人とは、リズム感が全く違う、独特のグルーブ感を持つ生演奏に完全に心を奪われていた。
この感覚は言葉でも映像でも音源でも表現することが難しいが、本当に素晴らしい、酒がよく進む。
夜もふけ、外に出てみると、通りの向こうまでびっしりと大型のバイクが並んでいる。
そのほとんどがハーレーダビッドソン。
周辺の地域の人達はハーレーに乗ってこの街に遊びにくるようだ。
なんとうらやましい遊び方だろう。