ざわめく波止場の街。乾いた風が心を軽くしていく。青空は悩みなんてなさそうな顔をしている。
ケーブルカーの行列を待つ事をあきらめて、10番のミュニバスに乗り、フィッシャーマンズワーフへ到着。
ここは、「漁師の波止場」という名の通り、この周辺は19世紀半ばのゴールドラッシュでサンフランシスコが大きな町になった時期以来の漁港らしい。
様々な色に塗られた漁船が多数停泊し、獲れたばかりの魚やエビ・カニ類を水揚げする場所であったそうだ。
なので、当然この町の名物はシーフードである。
オープンテラスのレストランで、クラムチャウダーと、シュリンプ&フレンチフライ、そしてサンフランシスコの地ビールを飲みながら、ゆっくりと過ごす昼下がりはとても心地よく、日々のライフワークのストレスを全て空が吸い込んでいってくれた。
フィッシャーマンズワーフの看板の下で、路上演奏のパフォーマンスをBGMにしながら、少しの休憩をとり、少し町を徘徊する。
船着き場の周辺をうろうろと歩いていると、客引きをしている黒人がいる。
話を聞いてみると、25ドルでゴールデンゲートブリッジとアルカトラズ島の周辺をクルージングできるツアーのようだ。
他にも現地ツアーのチケット売り場でアルカトラズ島の中へ入れるツアー等もあったが、人気なので事前予約しないと参加できないということらしく、断念し、クルージングに参加することにした。
30人ほどの乗客をのせた小さな漁船で、海を回遊していく。
時折り激しく船が揺れ、海水のしぶきが飛び跳ねてレンズや服を濡らす。
太陽の日差しはとても強いのに、風は冷たく、出発前に一度脱いだパーカーをもう一度着る事にした。
席の前に座っていた黒人のグループの女性二人がとても珍しい光景に見え、写真を撮ってもいいかと聞き、撮影をしたり、少しの会話を楽しむうちに、カクテルの差し入れをいただいたりと、ちょっとした船内での団欒を楽しんでいった。
船は、ゴールデンゲートブリッジの下を通る。
非常に美しい橋だ。サンフランシスコのブルーの空と海がいいコントラストになり、細長い一直線に伸びた赤い橋がよく映えていた。
世界一番美しい橋とも称されるということを本で読んだことがあり、そんなに派手な橋でもないのに世界一というのはおおげさだろうと思っていたが、この橋を間近で見たときには少し説得力のある言葉に変わっていた。
シンプルだが、美しい。
そして、また船は走り出し、アルカトラズ島の周辺を横切っていく。
船からは少し距離があり、内部に入るツアーではなく、細かい部分が見えなかったので、正直なんとも感想を持てなかった。
この島は監獄島とも呼ばれ、軍事要塞、軍事監獄、連邦刑務所として使用されていた島である。
1934年から1963年の間、誘拐犯や銀行強盗犯、脱獄の常習犯などがここに収容された。
海は冷たく、脱獄しても陸まで上がることが困難なために、ここで凶悪犯が収容されていたらしい。
そして、遠くにいるアシカに目をやりながら、港に戻る。