クラビーへ。バンコクからは1時間30分ほどのフライト。
空港からバスのチケットを買い、クラビータウンへ向かう。
宿を探しながら、街並みを眺めながら歩く。
クラビータウンは、河沿いの町。中心部からすぐに河へ歩いて行くことができる。
ここはバンコクに比べると、静かな町だ。
何かに不自由することも無い程に発展しているものの、都会の喧噪も無く、自然と文明のバランスがとても好き。
のんびり町を歩きながら、宿を決め、チェックイン後、河沿いへ行ってみる。
船着場をうろうろしていると、何人かの客引きが声をかけて来る。
話を聞きながら様子を伺う。
その中でも同じ空気感を感じたのが、ヤン君。
船の準備が整うと、少し不規則なリズムを刻む古びたモーターの音と共に白波が軌跡を作っていく。
クラビー独特の地表からそそり立つ石灰岩の山と、ゆるやかな河の流れを見つめながら、まだ慣れていないこの土地の匂いに溶け込んでいった。
辿り着いたのは、とある洞窟。名前は分からなかったが、少し観光ができるような形になっている。
洞窟の中に入って奥のほうへ歩いていく。
不規則なツララ状になった岩や、太陽の光が差し込む空洞、不安定な足下。
奥のほうへ向かうと、白骨化された人体の骸や、博物館で観た事のあるような壊れた古い壷がそのままの形で残されている。
ここで生活をして、飢えてしまった人がいたのだろうか。
疑問を抱えながら、ゆっくりと足を進めていった。
再び、ヤン君の操縦する小さなボートに乗る。
木の枝をかき分けながら、小さな河を超え、また町の中枢となっている河へ戻り、河の流れに逆らいながら、上流へ向かう。
少し行ったところで、とある河畔に着いた。
余った材木や落ちている木々を拾って作ったかのような、今にも崩れそうな橋を歩き、陸へ上がる。
少し行くと、ヤン君のアジトのような場所がある。
そこには、二人の小学生くらいの少年がのんびり佇んでいる。
何をする訳でもなく、ただ、飛んでいる鳥や、河の音や、空を眺めながら、何となく会話を交わし、作られた床上でなんとなく寝そべったまま、時間が流れていった。
しばらくして、近くの小さな水上の料理店へ足を運んだ。
格子状に作られた木の水槽のようなところで、魚が飼われている。
見た事も無い魚ばかりがうようよと泳いでいる。
中でも特に目を惹いたのが、体中の小さなトゲトゲと、愛らしい目と口をした、卵形の謎の魚。ハリセンボンの一種?
テレビゲームにでも出てきそうな、可愛い奴だ。
ヤン君と団欒しながら、ココナッツジュースを頂く。
ここのは濃厚で甘みがしっかりしていて美味い。
スプーンで皮の内側のココナッツの実の部分も食べ、少しのデザート気分を味わう。
真上から照りつけた太陽は、水平線に近づく少し前に、ボートは船着場へと戻った。
町の河岸を歩くと、昼時には目にしなかった屋台がいくつか目に入って来る。
小腹が空いてきたところに、濃厚なピーナッツソースに浸ったサテーを焼いている屋台が目に止まる。
迷わずにそれを頂いた。
河沿いのゆるやかな風と心地よく響くフライパンの調理の音や、グラスや食器の音と人々の喧噪と屋台の夜の明かりをBGMと背景にしながら、麦ののどごしが体を潤わせていった。
田舎の祭りの夜のような雰囲気。今日のクラビーの夜は、そんな感じ。